【完】神様のうそ、食べた。
「――お前、俺の腹を心配しろよ」
不満げに部長がそう言うと、私の前に、部長を睨みつめながら両手をバッと広げた真君が立ち塞がる。
「おんなのこにはやさしくするの!」
「真君……」
「お前、車に隠れて着いてきたんだな」
こら、とデコピンすると、真君の目がウルウルと揺れ出して、私に抱きついてきた。
「ぱぱ、ふくおかにかえるかとおもったの。かえってほしくなくて、ぼく。
ひっく……。いっしょにつれていってほしくて」
ぽろぽろ流れる綺麗な涙に、胸が痛む。
こんなに小さいのに、大好きなパパとは暮らせないなんて、悲しいよね。
「部長……」
「ああ、分かってる。帰るぞ、まこと」
「うう、うん」
手の甲でごしごしと涙を拭きながら、真君は素直に頷いた。
「遠足のあと、大事な話があるからその時に、その話をしような」
そう優しく頭を撫でると、真君を抱っこした。
「さて、帰りますか」
じっとこちらを見る目は、帰りたいなんて全然思っていない目だった。
――私もどうしていいか分からない。
ただ、部長が握ってくれていた手が、ずっとずっと温かいまま。