【完】神様のうそ、食べた。
産婦人科は、とってもオシャレな建物だった。
すぐ目の前にバス停もあるから通いやすそうな。
前に彼に連れて行かれた、学校の保健室みたいな小さく簡素で地味な産婦人科ではなく、煉瓦作りのアンティーク調のレストランみたいな内装。
無人ピアノがショパンを奏でるのをBGMに、絵画や花が飾られ、ガラス張りのテーブルには育児系の雑誌が並べて置かれている。
ふかふかのクッションソファに座ると、ゆったりと沈み、周りのソファは視界入らなくなる。
受付の人から渡された用紙に記入しながら、手が緊張から汗ばんで用紙が少し湿ってしまった。
人は二人いるだけだったが、なかなか呼ばれなかった。
ふらりと廊下にある浄水器を紙コップで注いで飲む。
宮本先生が入っていった建物の方には、子どもを預かる部屋が見える。
子どもが持っている色鉛筆やシールや絵本が、私が働いていた光の森社のものだったのが見えて、ちょっとだけ緊張が和らいだ。
いいなって思う。
行きの車で見せてもらったお腹のエコー写真。
指や丸まった体、目をつぶる小さな顔。
あの小さな命がお腹に宿るのってどんな気分なんだろうか。