【完】神様のうそ、食べた。


結局、真君のお迎えと同時に園を出たのが、八時過ぎだった。

お残り保育は、19時までの決まりなのだが、よく電車や突然の残業やらでお迎えが遅れてしまうから仕方ないけど。


侑哉、ご飯作ってくれてるかな……?


一緒に住み始めたのに、私は朝早いし、侑哉は飲み会でちょくちょく夜は居ないし、ほとんどすれ違いだったりする。

二階建ての一軒家なのに、侑哉は一階のお父さんの書庫を自分の部屋にしていて、二階は私が自由に使っていいことになっているから、同じ家なのになかなか一緒に居れない。

微妙な距離で、ギリギリ、姉弟でいるような。


「蓮川さん!」

バス停に着いて、スマホを鞄から取り出した時だった。
薄暗いバス停の屋根の下、私の顔を覗きこむ人。

「やっぱり蓮川さんだっ 待ってて良かった」

「えっと、あ、りさわさん?」

そう首を傾げると、有沢さんはにっこり笑った。
営業スマイルだといわんばかりの。
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