【完】神様のうそ、食べた。
「あんた……もしかして不良だったの?」
2年もバイトして頑張った弟に、バイクを褒めてやらねば、と思うのだが、褒める場所が見つからない。
「失礼な! 俺のどこが不良だよ!」
どこがって。
180はある身長?
ツーブロックに刈られた髪型?
外人みたいな彫りの深い顔は、睨まれると金縛りに合いそう。
――全部怖いじゃん。
私も弟じゃなきゃ目も合わせないかも。
というわけで、敢えて突っ込まないで置こう。
「ドラッグスターは俺の好きな漫画で主人公が乗ってるんだよ。愛称は星ちゃん! 倒れたら起きない我が儘野郎だから、優しく接してくれ」
ほい、とヘルメットを渡されながら苦笑しておく。
そしてベラベラとバイクの蘊蓄(うんちく)を語りだした。
あの日以来、久し振りに会ったのに、気まずくならないで済む反面、居心地が悪い。
気にしていないような雰囲気が、少し申し訳ない気分にさせる。