わすれなぐさ
(久世 愛美)
頭が痛い。
あたしは頭ごなしに説教されるためにここに出向いたわけじゃない。や、好きで来たわけでもない。
「聞いてるのか久世!」
「うるさいな、聞きたくなくたって聞こえるよ!」
「お前っその口の聞き方!」
「ちょっと静かに話してくれません?耳痛いので!」
この先生は苦手だ。
いつもいつもでかい声でまくしたてる。
つーか唾飛んでんだよ、汚いおっさんだな、ほんと。
「まぁ、いい…とりあえず教室に行け」
「教室ってどこだっけ?」
「なっ「しつれーしまーす」
うるさいこな目の前の教師の言葉を華麗に遮るように、気怠そうな声が飛び込んできて、不意に視線をくばせる。
そこには身長少し高めの爽やか青年が立っていた。