特殊浴場での特殊な欲情
ボーイのお仕事
コンコン、カチャ「小野様、お待たせ致しました。ご案内させて頂きます。」俺は廊下へ出た。
廊下にもフカフカカーペットが敷いてあり、少し先に2階へ登る階段がある。

ボーイが足元に跪き頭を下げ、「本日はご来店、誠に有難う御座います。マルマルさんで
ご案内させて頂きます。どうぞごゆっくりお過ごし下さいませ。」

「んー、もっとハッキリと。あと外に聞こえるくらいもっと大きな声でもいいよ。」
「はい、分かりました。」
「今夜でも案内やってみるかい?」
「ええ!いや、もう少し小野さんの見て覚えます。」

偉そうな俺。そう、1年経ったのだ!
目まぐるしい日々で、あっという間だった。

同期で入ったもう一人は半年で辞めて行った。なにせ仕事を覚えるまで3ヶ月休み無しだった。
二人新しくボーイが入ったので、早く慣れてくれるよう教育中であります。

冒頭の挨拶みたいのは、通称“ご案内”と言い、お客を待合室から呼び出し
サービスする女の子は階段の下で待っていて、このときご対面となりんす。

女の子は笑顔で「いらっしゃいませ〜!」とお客の腕に抱き付き、一緒に二階の浴室へ。
高級店ならではの殿様気分にしてあげる儀式である。

きっとまだまだ知らないことばかりだとは思うが、1年で知った事を記したい。

まず、吉原という地名は無い。東京都台東区千束っていう味気の無い地名だ。
浅草と三ノ輪を結ぶ通りに“吉原大門”という名の交差点があるので、昔は地名だったかも。

ちなみにその通りの、吉原の反対側は日本堤という地名で、通称“三谷”。日雇い労働者と
ホームレスの町。バイク仲間から「当たり屋が出るから走るな」と言われたことがある。

法的には個室サウナで営業許可を得ている。なので沢山ある個室の1部屋だけに、人が1人座って
入れるスチームマシンが置いてある。

警察のガサ入れは事前に分かるので、その部屋以外は使用中ってことにしてやり過ごすらしい。
俺がいたとき警察沙汰はなかったが、見事なザル法。

そして料金システム。俺が働いてるのは高級店で、入浴料が2時間で2万円也。
最初そう説明された時、思ったより安いもんなんだなぁ と思ったら、なんと!

入浴料は店の取り分。女の子と部屋へ入ったときか、帰るときに
女の子へ直接 4万円を支払うシステム〜

2時間で6万円ですよあなた!
ちょっと綺麗な女性とセックスしてみたいなーって軽い考えで出せる金額じゃないね。

お金持ちで吉原通いするのはご勝手にだけれども、借金してまで来る人も多いと聞く。
パチンコならぬ、吉原依存症か?

印象に残る人で、20歳前半くらいの爽やか青年がいた。ボンボンなのかなと思ったら
肉体労働で学費を稼ぎ、年に1回だけ自分へのご褒美に吉原へ来るそうだ。

おお、これは健全な吉原通い! と思ったけど、ソープランドじゃなきゃダメなのかなぁ ご褒美。
帰るとき「また来年来ます!」って、爽やかな笑顔を見せた。

高級店の売りは、即尺 ゴム無し!
部屋に入ったらキス、服を脱がされて、まずはお口で一発抜かされます。

あとは一緒にお風呂入ったり、エアマットでローションマッサージされたりで、ここでまたイッテヨシ!
お酒でも飲みながらおしゃべりタイム、そしてベッドにてセックス本番生ハメ。

ここまでして貰えたら、年に1回のご褒美になり得るかもですな。
噂では高級店より高い超高級店もあるらしい。総額10万円を超えるそうだ。どんなサービスするんだろう…

あとは気になる女の子達だが、さぞ偉そうにしてるんだろうなと最初はビクビクしてたけど、
全然そんなことなかった。

あ、そうそう、店や部屋の掃除とか呼び込みとか大変だろうなぁ と思ってたのも、無しだった。
店内の掃除は早朝に専門業者がやってくれる。部屋の浴室磨きも絨毯の掃除機もやってくれる。

ベッドでボーイが寝てても気にせずやってくれる。いつからか掃除が来たの気が付かないくらい
慣れてしまった。

タオル、シーツ、自分達の服、すべてクリーニング屋さんまかせ。
暇なときは店の前立ちするけど、積極的な呼び込みはしなくていいと言われた。

あ、女の子の話しだった…
旅行のお土産のお裾分けを貰ったりと、全然偉そうにしていないのに驚いた。

女の子がいないと成り立たないのだから、もっとグイグイ来てもいいのにな、と思うが
それは浅はかな考えで、店と女の子とボーイは持ちつ持たれつの良いバランスが保たれている。

ちょっとだけ面倒なのは売れる娘。若くて可愛いとどこの店に行っても稼げるからワガママだけど
うちの店が他よりお客が来るってことが分かると、ガラッとおとなしくなる。

30代でも40代でも、もれなく女の子と呼びます。
そして特に若くない女の子はボーイに優しい。

自分が写真で選ばれないのを分かっているから、ボーイにプッシュして欲しいのだ。
指名のないフリーで来た客には、問答無用で売れ残っている女の子を選んで頂かねばならない。

例えば、「この娘はベテランなのでソープのテクニックは姉妹店を入れた中でもトップと言われてます。もし初めてか他の店でつまらないサービスをご経験でしたら、騙されたと思ってこの娘で案内させて貰えませんか!」

「私が責任を持ってお勧めします!」と、名刺を渡す。
半数以上は、「そんなに言うんだったらこの娘で。」となります。

そしてご案内のとき、客を呼ぶ前に階段の下で女の子に「超テクニシャンってことで」
と、コッソリお願いする。

「まかしといて。ありがとね。」俺はこの言葉を聞いてやっと安堵出来る。
彼女は少ないフリー客を付けて貰って感謝してるとともに、この客を満足させて今度は
自分への指名客で来て貰いたいという思惑があるのだ。

普段から野良先輩や、瀬河先輩 ←受付や電話対応を主にする副店長のような存在。優しい声の人。
から、どの女の子はどういうサービスが出来るか の教えがとても大切。

客の対応をこなして来ると、ボーイ指名の電話が来るようになる。
と言っても俺がサービスする訳ではないぞ!

この前、小野さんに勧められた娘がすごい良かったんで、また写真見に行っていいですか?
こんな感じで俺宛に電話が来るようになる。

「また小野さん指名だよ。野良さんの来ないね〜」と、瀬河さんがからかう。
野良さん「長〜い目で見てね」と顔の皮膚を横に引っ張る。

みんなで爆笑したのは良い思い出。このあと俺はちょっと調子に乗っちゃって、
女の子と長く話すのは禁じられているのに、ある女の子と映画の話で盛り上がり

たぶん30分以上、立ち話をしてた。
店長が遠くから見てたの気付いていたにもかかわらず。

「じゃ私、控え室に戻るから」「あ、はい、暫くお待ち下さい。」
店長が近づいて来た。

「小野ちゃんよー」言うなり胸ぐらをつかまれ、
「いつまで女の子と話してんだ! ああ?!」 控え室にまで聞こえるくらいの大声で怒鳴られた。

「す、すいませんでした!気を付けます。」つかまれながも頭を下げた。
「最近たるんでるんじゃないのか!」「はい、すいませんでした!」

普段は冗談ばかり言ってる店長の初めて見る姿だった。
ホントその通りで、順調だから調子に乗ってた。

店長は普段モードに戻って、
「これから忙しくなるんだ。しっかりしてくれよ。」

何それ 怖い Σ(゚д゚lll)







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