四季。彼と生きた青春
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小さいころから感じていたズレがある。
わたしは時計を見てるのに、みんなは日にちを訊いてくる感じ。
でも時計の針の音が気になって顔を上げられないから、必死に何回針が回転したのか数えて応えていた。
そのズレが大きくなると、人がなにを話しているのかわからなくなった。
耳が使い物にならないからリアルな唇だけが動くのを見て、たまらなく気持ち悪くなった。
苦痛だった。
瞬きの隙に人を呪う眼球も、美しいものと醜いものを嗅ぎ分ける鼻も、わたしのこころをざわめかせる舌を持った唇も、張りぼての鼓膜の貼ったふざけた耳も。
ぜんぶぜんぶ、大嫌いだった。
みんなで輪になって話をしているとき、そこにあるはずのない時差を感じていつも不安だった。