四季。彼と生きた青春





でも、笑っていないと怖くて仕方なかった。


散々笑って口を閉じた後に襲ってくる虚無感が、いつもわたしの影の中で首をもたげていたから。


ただ、そうやって笑うたび、誰かと視線を交わすたび、知らない声が聞こえるたび、違和感は広がり塞げない口から叫びが漏れていった。


悲鳴を抑え込んでいた手はやがて、積み重ねたズレを正すための痛みを産む手になった。


痛みを与えたあとの世界は、余計な音の聞こえない、とても穏やかな暗闇だった。

目を閉じて、開く。

そして滲み出る涙がみっともないほど心地良く、どうしようもないほど孤独だった。


でもそこに、彼だけが現れた。

そのなかに、彼だけがいた。


彼だけはその濃い色の眼差しでわたしの目線まで屈んで、その瞳で静かに眺めて、わたしが息を吐いたとき、わたしを救う、彼だけのぬくもりをくれる。


身体のどこか、奥深くから湧き上がってくるような感覚のなかで、時を止めてしまいたいと何度も思った。




< 5 / 25 >

この作品をシェア

pagetop