四季。彼と生きた青春
ねぇ、どこにも行かないで。
ずっとこうしてて。
離さないで。
嘘でもいい。
どうか一言だけ、そばにいると言って。
そしたらわたし、たぶん大丈夫だから。
傷痕の存在すら忘れて抱きしめる腕に、こころからの祈りを捧げた。
それでもついに、彼はなにも言わなかったけれど。
だから身体を離したとき、わたしは上手く笑えなかった。
*
彼の誕生日を知ったあの日、ケーキはチーズケーキが好きだと教えてくれた彼のために、その日からひまを見付けてはクックパッドでレシピを漁っていた。
数ヶ月分の気合は充分だ。
わたしはケーキを食べないから、彼1人で食べ切れるサイズのケーキ型を探し、地元のスーパーにない材料は、わざわざバスに乗って成城石井まで行って揃えた。