四季。彼と生きた青春






ねぇ、どこにも行かないで。

ずっとこうしてて。

離さないで。

嘘でもいい。

どうか一言だけ、そばにいると言って。

そしたらわたし、たぶん大丈夫だから。


傷痕の存在すら忘れて抱きしめる腕に、こころからの祈りを捧げた。

それでもついに、彼はなにも言わなかったけれど。


だから身体を離したとき、わたしは上手く笑えなかった。











彼の誕生日を知ったあの日、ケーキはチーズケーキが好きだと教えてくれた彼のために、その日からひまを見付けてはクックパッドでレシピを漁っていた。

数ヶ月分の気合は充分だ。


わたしはケーキを食べないから、彼1人で食べ切れるサイズのケーキ型を探し、地元のスーパーにない材料は、わざわざバスに乗って成城石井まで行って揃えた。




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