四季。彼と生きた青春
ベイクドチーズケーキとレアチーズケーキが二層になった、手のひらサイズの小さなケーキ。
赤い箱と白いリボンでラッピングして、メッセージカードを添えて彼に渡した。
好きな人に自分の作ったものをあげるなんて初めてで、恥ずかしくてケーキを受け取る彼の顔も、うまいと言って食べる彼の顔も、メッセージカードを開く彼の姿もまともに見れなかった。
いくつかの摩擦音がいやに耳に残る時間だった。
うれしくて恥ずかしくて、彼のことが好きすぎてどうにかなりそうで、こころの鎮め方を誰かに教えてほしかった。
『こーいうときって、“愛してる”って書くんじゃねぇの?』
にやけた彼がその手にチラつかせるカードには、“だいすき”の4文字が書かれていた。
『……』
『俺の誕生日なんだからもっと盛大に祝えよ』