天の川に浮かぶ島
「詩織」

 呼ばれて顔を上げる。

 見れば夏彦の顔から皺が無くなり、目覚めたときに見た元の夏彦の容姿に戻っていた。

「夏彦、元に戻ってるよ!」

「ああ、一時的に戻っただけだろう。薬の効果がなくなりかけて不安定になってるんだ」

 夏彦が、すっかり憑き物が落ちたようなすっきりした目を細めながらそう答えたとき、廊下から無数の足音が近づいてきた。

 驚いて肩をこわばらす私に、夏彦は、心配ないと穏やかに言った。

 開けられた扉から数人の白衣の人間たちが現われた。みんな心配そうな複雑な表情で夏彦と私を交互に観察している。

 夏彦は人間たちに向き直って、口を開いた。

「今まで世話になったね。すべて詩織に話してしまったよ。明日で最後だ。予定では明日までだったが、みんな、もうこれで終わりにしよう。長い間―――俺の夢に付き合ってくれてありがとう」

 夏彦の言葉がそう締めくくられたとき、人間たちは不自然に動かなくなった。

 私は夏彦を見上げた。

「俺の作ったロボットだよ。機能停止の言葉を言った。もう後戻りはできない」

 夏彦は私を見下ろした。

「さぁ、もう二十四時間きったぞ。人生最後の日をどう過ごそうか?」
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