天の川に浮かぶ島
七夕の夜
最後の夕日が沈もうとしている。
「ついたぁ」
「降りないのか?」
背負われたまま、にこにこしている私に容赦なく言葉がかけられた。
このまま夏彦の歩行のリズムに身を任せ、ずっと二人の影を見ていたかったけれど、しぶしぶ背中から降りる私。
小高い丘の上に、私たちはやってきた。
「本当に、島だったんだね」
「ああ。誰にも研究の邪魔をされたくなかったからな」
なだらかな傾斜を背の低い草が覆い、遠くのほうに海が見えた。
「この時間帯、私大好きなんだ。みて、空も海も、草も土でさえも、強く反射してるわけじゃないのに、すべてが金色に光ってる。なんだか、魔法がかけられたみたいじゃない?」
「魔法か。まぁ、伝承の多い島だ。不思議なことが起きても可笑しくはない」
「夏彦、一五〇〇年間、ずっとここから出てないの?」
「ああ、島の外がどうなってるのかも分からない。もしかしたら、もう何もないかもな」
にやりと笑う夏彦を、興味津々の瞳で見上げる。
こんな話をしていると、きりがない。それが分かっている夏彦が、自然に話を進める。
「さて、ここでいいのか?」
夏彦は研究所で昼間のうちに作った短冊の下がった竹を肩からはずし、地面を足でたたいた。
「うん、ここに立てよっ」
私がごそごそと、大量の食料と水が入ったリュックを下ろしているうちに、夏彦はあっというまに、竹を地面に固定した。
海からの風がゆっくりと丘まで昇ってくる。
笹の葉の間に下がった二枚の短冊が、それにゆらゆらと揺らめいている。
なんて願い事を書いたの?とは聞かない。きっと同じことを書いているはずだから。
「よしっ、星が出るまでここで待つか?」
「それもいいけど、夕日が沈む前に出発しない?」
「いいよ」
夏彦は私が背負っていた大きなリュックを、今度は笹の代わりに担いだ。
私は左から夏彦の右手を握る。
「海岸までちょっと歩くよね?」
「ああ、でもついたら船の中でいくらでも休めるからな。歩けるか?」
「うん」
「ついたぁ」
「降りないのか?」
背負われたまま、にこにこしている私に容赦なく言葉がかけられた。
このまま夏彦の歩行のリズムに身を任せ、ずっと二人の影を見ていたかったけれど、しぶしぶ背中から降りる私。
小高い丘の上に、私たちはやってきた。
「本当に、島だったんだね」
「ああ。誰にも研究の邪魔をされたくなかったからな」
なだらかな傾斜を背の低い草が覆い、遠くのほうに海が見えた。
「この時間帯、私大好きなんだ。みて、空も海も、草も土でさえも、強く反射してるわけじゃないのに、すべてが金色に光ってる。なんだか、魔法がかけられたみたいじゃない?」
「魔法か。まぁ、伝承の多い島だ。不思議なことが起きても可笑しくはない」
「夏彦、一五〇〇年間、ずっとここから出てないの?」
「ああ、島の外がどうなってるのかも分からない。もしかしたら、もう何もないかもな」
にやりと笑う夏彦を、興味津々の瞳で見上げる。
こんな話をしていると、きりがない。それが分かっている夏彦が、自然に話を進める。
「さて、ここでいいのか?」
夏彦は研究所で昼間のうちに作った短冊の下がった竹を肩からはずし、地面を足でたたいた。
「うん、ここに立てよっ」
私がごそごそと、大量の食料と水が入ったリュックを下ろしているうちに、夏彦はあっというまに、竹を地面に固定した。
海からの風がゆっくりと丘まで昇ってくる。
笹の葉の間に下がった二枚の短冊が、それにゆらゆらと揺らめいている。
なんて願い事を書いたの?とは聞かない。きっと同じことを書いているはずだから。
「よしっ、星が出るまでここで待つか?」
「それもいいけど、夕日が沈む前に出発しない?」
「いいよ」
夏彦は私が背負っていた大きなリュックを、今度は笹の代わりに担いだ。
私は左から夏彦の右手を握る。
「海岸までちょっと歩くよね?」
「ああ、でもついたら船の中でいくらでも休めるからな。歩けるか?」
「うん」