天の川に浮かぶ島
真実の一歩前
 見た目に筋肉はついてるのに、なんで歩きにくいんだろう。

 鏡に映してみても悪いところなんかなさそうなのに。

 なんか動きにくい。

 体が硬いのかしら。

 がむしゃらにリハビリを繰り返すこと三日。

 夏彦の論文の締め切りを明日に迎えた日の夜。

 私は電気を消してしばらく経つのに、なんだか寝付けなくてベットの上でごろごろと動いていた。

 夏彦と外に出た日から、この三日間、一度も夏彦に会っていない。

「論文かいてるのかなぁ」

「進んでるのかなぁ」

 ベットの上でしばし体育座り。


「―――」


 ごそごそと布団を押しやって「ちょっと、見に行ってみよ」と部屋を抜け出した。

 廊下は限られた電気しかついていなく、薄暗くていつもに増して狭く感じる。

 たしか、誰かが夏彦の部屋の場所、言ってたっけ。

「うーんと、二〇一実験室の、となり?実験室、じっけんしつはぁ」

 よく見ながら歩いてみると、意外に部屋の数が少ない。

 自分の部屋から外に続く病院の扉までの廊下には、見慣れた病室があるが、少し外れて見ると、ほとんどの部屋が倉庫で、人気もない。

「二〇一だし、二階かな」

 短い階段をやっと上りきると、ますます暗くなった。

 非常口を指し示す明かりしか点いていないから目が慣れるのに時間がかかった。

 廊下に面した数少ない扉の名前を、順番に調べてみる。

「ないなぁ」

 突き当たりを右に曲がる。

 実験室二〇一。

「あった!これの、となり?」

 右手に目をやれば、少しだけ扉の開いた部屋がある。

 薄っすらと微かにだが、明かりが漏れて、人の気配がしていた。

 緊張しながらそっと扉の隙間に顔を近づけた。
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