*偽りの仮面を被った王子様*
「…………」
あたしはそれっきり何も言わず、男が口を割ってくれるまで沈黙し続ける。
長い沈黙が続く中、どうやら男は観念したようだ。
「あ~、僕が言ったこと、ファビウスにはナイショね?」
男は唇に人差し指を乗せ、そう言った。
あたしはコクコクと何度もうなずくと、男はようやく唇をひらいた。
「僕はグエン。
私立探偵をしているんだ。
それで四日前、人さらいの情報と、ハバント孤児院のことを調べて欲しいって、ファビウスから依頼を受けたんだ」
ハバント孤児院。
孤児院の名前を聞いたとたん、あたしの心臓が大きく跳ねた。
だって、その孤児院の名前は間違いなくあたしが育ったところだった……。
雷に打たれたみたいに動けないあたしをよそに、グエンはそのまま話し続ける。
「それで調べたら、その孤児院。
かなり運営が厳しくてね、破綻(ハタン)寸前だったことがわかったんだ」