*偽りの仮面を被った王子様*

「……そもそも、どうして孤児院に人さらいが侵入したのかが不明だった。

金がないところに人さらいが侵入しても利益は出ないからな。

さらうなら、大金持ちの家にするだろう。


そして身代金を用意させ、そのままとんずらして、さらった人物をどこか異国に売り飛ばしてしまえば足もつかない。

それどころか収入もずっと増える。

リスクは伴うかもしれんが、同じさらうなら、その方がずっといい。

俺ならばそうする。


だが、奴らはさらった君を売り飛ばすことだけを考えていた。


なぜだろうと考えたら、俺の中で孤児院側が人さらいを雇ったのかもしれないという結論が導き出されたんだ。

そんな中でお前を孤児院に戻すわけにもいかず、だが、このまま静かにこの屋敷に留まってほしいと言うには俺の意見を話さなければならない。

それを言えば、お前はどうする?

ほぼ初対面にしかすぎない俺なんかよりも長年世話になった孤児院の方を信じるに決まっている。

そして、お前はこの屋敷から逃げ出し、孤児院に帰るだろう。

となれば、お前はまた人さらいに狙われる。

今度は俺が手の届かない場所に追いやられるかもしれない。

そう思った……」


< 20 / 29 >

この作品をシェア

pagetop