*偽りの仮面を被った王子様*
…………。
――それって、つまり、あたしを助けるために、閉じ込めたの?
呆然としたままファビウスを見つめていると、また彼は話しはじめる。
「それに、俺はお前を逃したくないと思った。
警察に引き渡さなかったのは、そういう理由が重なったんだ」
逃したくない?
「それって……」
やっぱり意味がわからなくて、顔を上げると、整ったまゆ毛の先が悲しそうに垂れ下がっているのが見えた。
「好きだとそう言えばいいんだろうが。
俺よりもずっと年下のお前を好きだなどと言って、誰がこの感情を理解できる?
お前は俺を軽蔑(ケイベツ)し、怖くなって逃げ出すのも時間の問題だ……」
――愚かだろう?
そう言ってファビウスは笑う。
だけど……だけどね。
あたしは笑えない。
だって、だって、あたしもファビウスが好き。
あたしを助けてくれた優しいファビウス。