*偽りの仮面を被った王子様*
やり方はおかしいものだったけれど、それでもファビウスなりにずっと冷血なフリをしてあたしを守ってくれたんだ……。
さっき気づいたばかりだけど、ファビウスに寄せるこの想いは間違いなく恋。
ファビウスみたいに笑えない。
だからあたしは口をひらく。
「ねぇ、ファビウス。いい方法があるわ?
あたしをココのお手伝いさんにすればいいのよ。
あたしはお転婆だけど、孤児院育ち。裁縫だって料理だって……掃除もできるよ?」
「アール? お前……何を言って……?」
「あたし……さっきね、孤児院があたしをさらうように仕向けたっていう内容よりも、ファビウスに嫌われているっていうことの方が悲しいって思ったの」
「アール?」
「それってきっと、こういうことよね?」
あたしは、ひとつ笑ってそう言うと、ファビウスの薄い唇に自分の唇を押し付けた。