*偽りの仮面を被った王子様*
ベッドに横たわる彼に見とれていると、突然腕が伸びてきて、引っ張られた。
「うわわっ!!」
気がつけば、目の前にはサファイアの瞳があたしを覗き込んでいた。
「アール、また食事の用意をしてくれたのか?」
まだ寝起きらしいその人のテノール声はかすれていて、男の色香を放っていた。
――起きていたの?
なんて思っても、声に出せないのは、大好きなその人が射抜くようにあたしを見つめてくるから……。
ドキン、ドキンと心臓が高鳴って、胸がいっぱいになる。
何も話せない。
だけど、何か話さなきゃ。
あたしがファビウスに見とれていたっていうことを知られてしまう。
恋人になったとはいえ、そんな心情を知られるのはやっぱり恥ずかしい。
「……これくらいしか役に立たないから……」
ドクン、ドクンと高鳴る胸を抑えるように話す。
その言葉は、あたしが思っていたよりもずっと悲しい内容になってしまった。