*偽りの仮面を被った王子様*
これじゃあ、ファビウスに面白みがない人間だと思われてしまう。
前なら、それもいいかと思えたかもしれないけれど、今はそうじゃない。
なにせ、あたしは今、ファビウスの恋人なんだから……。
悲しくなって目を伏せると、優しい声音が話しかけてくれる。
「気づいていないかもしれないが、俺は少なくともアールがこの家にいるだけで嬉しいし、役に立たないとも思ってはいない。
それに、君はとても魅力的だ。小さな唇に大きな目。それから、このさわり心地が良い赤毛の髪も……」
彼はそう言うと、あたしの頭を撫でた。
――ファビウスの言葉は本当だと思う。
あたしを見つめる眼差しがとても優しいから、そう思う。
だけど、好きな人の役に立ちたいって思うのは誰だって当然のこと。
あたしは口をあけて反論を試みる。
……んだけど、あたしよりも先にファビウスが話した。
「どうしても役に立ちたいというのなら、そうだな。ずっと俺の腕の中にいなさい」