*偽りの仮面を被った王子様*
あたしの名前はアール。
両親の顔も知らずに幼い頃捨てられて、孤児院に育てられた。
孤児院の中では――――たぶん、うまくやっていたと思う。
『たぶん』っていうのは、あたしには誇れるものがこれといってなかったから……。
16歳になったっていうのに、同じ孤児院にいるみんなよりもずっと細くて、おまけに背も130センチと小さめ。
それに拍車をかけて、どこにでもあるような赤毛は、天然のボサボサ頭。おかげでいつも、髪は左右ふたつに分けて、縄のようにきつく編んでおかなければならない。
あ、でも目は気に入っているの。
新緑色。
――――だけど、それだけといえば、それだけ……。
特に抜け出ているわけでもない容姿。
そんなだから、あたしを雇おうっていう人はまったくいなかった。
しかも、16にもなれば里親に引き取られてもいい頃合いなのに、あたしってば、気に入らない人にはとことん無愛想で、お転婆な性格をしていた。