*偽りの仮面を被った王子様*
だから、あたしを指名してくれる里親もいない。
そんなあたしでも、孤児院の中のみんなやシスターたちはとても良くしてくれた。
だから、あたしもその好意に甘えないで、一生懸命シスターたちの手伝いをしようと考えていた。
その矢先――――。
だけど物事はけっしていい方には向いてくれない。
――――今から一週間前のこと。
その日の深夜は真夏の真っ只中で、とても寝苦しかったのを覚えている。
孤児院に、人さらいが押し込んできた。
うっすらと目をあけていたあたしの視界が急に真っ暗になったかと思ったら、息苦しくなって、身動きがとれなくなった。
そのまま、あたしは袋に詰められたの。
車のエンジン音がしたし、中はオイルくさかったから、あたしはそのまま連れ去れ去られたんだと理解したわ。
それでも、あたしは孤児院の中じゃ、けっこうな行動派。
車が停止しているスキを狙って袋から抜け出し、人さらいから走って逃げてやったわ。