*偽りの仮面を被った王子様*
だけど人さらいたちも黙って逃がしてくれるはずもない。
あたしがいなくなったことにすぐ気づき、追いかけてきた。
その日は金色に輝く満月で、薄暗い夜道でもでこぼこした地面を走って逃げれるくらい明るい夜だった。
一生懸命走って逃げるあたし……。
そのあたしよりも、ずっと背が高い人さらいたちは目と鼻の先までやって来ていた。
それでも、なんとかして逃げ切ってやろうと、あたしは息を切らして走り続けた。
その時だ。
あたしがファビウスに出会ったのは……。
だけど、いくら周辺に彼しかいなかったからといって……。
たとえ、彼の年齢が30歳あたりであって、
象牙色の肌は満月の光に照らされ、まるで発光しているようで、絹糸でできたみたいなプラチナブロンドもすごく美しかったとしても……。
あたしは、月明かりに導かれるようにして立っていた彼に救いを求めてはいけなかったのよ。