*偽りの仮面を被った王子様*
たとえ、夜なのに、どうしてか彼の目の色がサファイアだとわかったとしても、
肩幅もあって凛々しくて、だけどすらりとした長い手足や体に目を奪われたとしても!!
すくなくとも、人さらいたちに捕まるよりはずっといいと思うなんて、間違っていたの……。
――――深夜遅く。
血相を変えて逃げるあたしを見たファビウスは尋常じゃないと理解したらしい。
手を差し伸べて、屋敷まで連れ帰ってくれた。
それがいけないことだと知らずに……。
――――その日、ファビウスはあたしを、天蓋のついた立派なベッドがあるこの部屋で休ませてくれた。
疲れがとれた翌朝は、食べ物を与えてくれた時に親のことを尋ねられたっけ……。
だけど、彼はあたしの窮地を救ってくれた人。
だからきっと、彼はあたしを孤児院に返してくれると思った。
あたしは、自分には親がいないことと、16になった今でも里親が見つからず、孤児院にいること。