*偽りの仮面を被った王子様*
里親が見つからない理由である、自分の性格なんかもちょっとばかり話した。
あたしの境遇を聞き終えたファビウスは、少し考えるようにして部屋を出て行ったのを覚えている。
そして、その日の夕方――。
彼は変貌した。
今まで、優しくしてくれたことが嘘のように、ほんの少し穏やかだった目つきは鷹のように鋭くなり、微笑すら消えた。
その日から、あたしはこの部屋で、捕まった囚人のように暮らしている。
時刻は昼あたり。
部屋にいるっていうのに、太陽の光が部屋の隅々まで降り注いでくる。
あたしのすぐ前にあらわれたファビウスは、パリッとしたカッターシャツにネクタイをしめてスーツを身につけている。
「……今日は早めに戻る」
ぶっきらぼうな言葉が背後から聞こえた。
あたしは返事をすることなく、ベッドの上で横になり、寝たふりを決め込んだ。
これはあたしにとって、ささやかな抵抗だ。