*偽りの仮面を被った王子様*
ファビウスは、あたしに関心がないのか、そのまま部屋を後にする。
なに、あれ。
あたしをここに閉じ込めているクセに、興味なさそうにするなんて、ムカつく!!
あたしは、なんとかしてイライラを振り切ろうと、寝返りをうつ。
そんなあたしの枕元には、ラップでふたをしているサンドイッチが入った平皿と水が入っているペットボトルがひとつ、置いてあった。
――ファビウスはものすごくイヤな奴。
人権を無視して部屋に閉じ込めて!!
それなのに……。
あたしが飢え死にしないよう、毎日こうして食事を置いていく。
そういえば彼、あたしを助けてくれた時も嫌な顔ひとつもしなかったっけ……。
ううん、違う。
ファビウスは人殺しをして捕まるのがイヤなだけ。
自分の屋敷から死体が出たら気持ち悪いし――。
だから、特に深い意味はない。
あたしって、どれだけお人好しなの?
ほんの少しでもファビウスが優しいと思うなんて!!