ヒマワリ君の甘い嘘
「気持ち悪いな。なんだよ急に」
日向くんが耳元で言う。
私、日向くんの声、好きだなあ。
…なんだ、
私の初恋、
終わってなんかなかったじゃん。
恥ずかしいけど、中一の頃からずーっと続いてたんだ。
「そっかぁ、私、あの時からずっと日向くんが好きだったんだぁ…」
私はそう言ってまた笑う。
恋なんて、
気づいてみると、案外簡単で。
こんなにも一瞬で熱を帯びる。
日向くんがゆっくりと、私と身体を離した。
また急に心臓が早くなる。
ドク、ドクと、脈打つたびに、私の頭の中を真っ白にして行く。
向き合って見る、日向くんの顔。
面影なんか、全然ないな…
きっと私は変わらず、ずっと童顔のままなんだろうけど。
転校してきてから、始めて目が合ったあの時のように、また日向くんの丸い瞳に吸い込まれそうになる。
「今は?」
「(へっ!?!?)」
予想外の言葉に、さっき“好き”なんて軽く呟いた私を殴ってやりたくなった。
自分でも分かるくらいに、顔が熱くなる。
“今は?”だなんて、
そんなの決まっているけど…
こんな顔を見つめ合ったままでなんて、恥ずかし過ぎて、言えない。
こういうところ、日向くんぽいっていうか…
ズルくて、ちょっと意地悪。
自分はそんな、澄ました顔して、
私が今、どれだけドキドキしてるか知らないくせに。
ジィっと見られて、逃げる場所なんて私にはない。
「いっ、いまは…」
何か答えなきゃ、って焦った私は俯いて言った。
好き
たった二文字なのに、
言葉にしたらきっと、一秒にも満たないのに、
私の口、スネ夫みたいに“ す ”の形になってそうだな…
「ストップ。一方的にはフェアじゃねぇよな」