ヒマワリ君の甘い嘘


日向くん、保健室か屋上でサボるって言ってたよね…?



階段を素早く駆け下りた私は、階段すぐ横の保健室のドアを開けた。



「あれっ!?開かない…!」




ドアの横に掛かっている札を見ると、『不在中』の文字。



先生いない…!



って、ことは……




「屋上っ!」




チャイムが鳴る前に日向くんのとこに行かないと、先生に捕まっちゃう!



私は何時も使わない脚と杯を精一杯機能させて、屋上へと走る。



なんで屋上4階なのっ…!



肺に酸素が届かなくて呼吸が出来ない。



それに、体温が上がって汗までかいてきた。




やっとのことで屋上についたはいいものの、走った後の身体は言うことを聞かない。



膝に手をついて、ゼーゼーと荒い呼吸を整える。



少し落ち着いた後、ゆっくりと深呼吸をすると、私は屋上のドアノブに手を伸ばした。


いつもなら屋上のドアは閉まっているけれど、日向くんが鍵が壊れてるって言ってたし、開くはず。



ーキィィ…




錆び付いた金属音が踊り場に響く。



チャイムはもう、とっくのとうに鳴っている。


大きな音を出せば誰かに気づかれてしまう。


私はあまり音を立てないように、少しだけ開いたドアの隙間に、身体を滑り込ませた。



ガシャン、と私の後ろでドアが閉まる。



思ったより風が強くて、私の髪の毛を更にぼさぼさにした。



眩しい太陽の光に目を細めて、私は日向くんを探す。



い、居た……




フェンスの近くで横になって寝ているのか、私にも気づいていない。



私はゆっくりと日向くんに近づく。



「日向、くん……?」



顔を覗き込むと、私の想像通り、彼は寝て居た。


寝息なんてひとつも聞こえないくらい、静かに寝ている。




今日は天気もいいから、日向ぼっこするのに最適だと思うし…


こんなに気持ちいい日だったら、寝ちゃうよね…。



日向くんの綺麗な顔にかかる、黒色の髪が、風によって揺れる。




思わず見とれてしまった。



「(華が言う通り、ほんと、王子様みたい……)」



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