ヒマワリ君の甘い嘘


「わざわざ、ありがと」



表情がバレないよう、下を向いて紙袋を受け取ると、あたしはまた歩き始めた。




ダメだ。




これ以上高崎と一緒に居ると、



きっとあたしはこの人に甘えてしまう。



「ちょ、白石______




高崎にバレないよう、あたしは笑って振り返った。



「なに?」




「なんかあった?」




また、君は



あたしの弱いところをすぐ見つけてしまう。




「別になにもないよ?」




そんなの嘘。



本当は甘えたいくせに。



高崎に気づいて欲しいって、心の何処かで思ってる。



でも、そんなことしてしまったら


きっともう戻れないから。




「じゃあ、あたし行くね」



これでいいんだよ。




「待てって」



パシン、とあたしの手を何かが掴む。



あたしは振り向けないまま、ずっと地面を見つめた。



「じゃあなんでさっきからずっと辛そうに笑ってんの?」



そうやって、あたしを見抜いてしまう君の手は、なんでこんなにもあったかいのだろう。



「俺のせい?」



そうだよ、高崎のせい。



高崎が、笑ってればいいことあるって言ったから。




「話ぐらいきくぞ?」



「いいって。…今はひとりでいたい気分なの」



まだあたしの嘘は続く。


笑って、笑って。




「それ以上嘘着いたらキスするよ」



…は!?



あたしが止める暇もなく高崎は屈む。



「ごめん、嘘」



あたしの耳元で言うと、高崎はあたしが着ていたパーカーのフードをあたしに被せた。


「なんなの?わけわかんなっ……」



「全部俺のせいにしていいから、」



フードが邪魔をして、高崎の顔が見えない。



「泣けって」



「…っ」



高崎の言葉を合図に、あたしは溢れるほど涙を零した。




「高崎の…ばか…っう」



「うん。ごめん」



「なんで追いかけて来たりするんだよ…っ」




「うん」




大好きだった人が、遠い誰かのところへ行ってしまった。



もっと一緒に居たかったよ


また一緒にお昼食べたかった。



でも、それはきっと


もう実現することはない。




馬鹿だなぁ、あたし。



こんな道端で大泣きして。




あたしが泣いている間ずっと、高崎は何も言わずとただ、隣に居てくれた。



二人して、道端のコンクリートに寄りかかって



ずっと泣いた。





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