ヒマワリ君の甘い嘘
「とりあえず、栄養ドリンクと林檎買ってきた」
ふたりしてリビングに入ると、高崎の手からスーパーの袋を受け取ってそのまま冷蔵庫に入れた。
「風邪?」
「ううん。……お腹痛くて」
あたしは高崎に向かってニコリと笑うと、食器棚からコップをふたつ取り出した。
身体はどこも痛くないよ。
「ごめんね。急に行けなくなっちゃって」
「しょうがないって。…つーか、ぶっちゃけ、今も会えてるし俺は全然いいよ」
なによそれ、
「正直言って、めちゃめちゃ心配だったし。元気だって分かったから俺はもう帰ってもいいんだけどね」
高崎は優しく笑う。
ダメだ…
こうやって、
どんな時も君はあたしに優しくする。
甘えたいって充分思うのに、
それをやってしまったら、もっと最低な人になってしまいそうで、
でも、独りでは居たくなくて、
この人に側に居て欲しいって思っちゃって、
あたしはなんて弱い人間なんだ。
急に約束すっぽかしたって、
こうやってあたしの元へ飛んで来てくれる。
そしてまた何時ものように笑うの。
「高崎、」
「ん?」
「ありがとう」
あたしはそういうと、ソファーに座っている高崎の前に麦茶が入ったコップをそっと置いた。
「白石………、」
あたしの名前を呼んだ彼の顔は、よく見えない。
「泣いた?」
「……え__ 」
「目、赤い…」
家に入れた時点で、
こうなってしまうだろうな、とは分かって居たけれど
気づいてくれたことに
驚いた反面、
素直に嬉しかった。
高崎は、あたしの心を見つける天才だね。
「高崎、すぐ気づいちゃうよね」
ふふ、とあたしは笑うと、高崎の隣に座った。
「言ったじゃん、いつも見てるから分かるって」
あたしと同じように、高崎も笑う。
「…また何かあった?」
あたしはその声に、
数時間前起こったことを、全部話した。
裕也が家に来たこと。
ヨリを戻そうって言われたこと。
ちょっとでも気持ちが揺れてしまったこと。
全て、話した。
話している間、泣かなかったのは
自分でもビックリしたけど、
きっとそれは、高崎が
「うん、うん。そっか」って、優しく話を聞いてくれたおかげだと思う。