ヒマワリ君の甘い嘘


***






全て言葉にしたあたしは、
目を伏せて、俯く。




隣に居る彼が、どう思ったのかは
わからないけれど、

話すだけ話したあたしは、なぜかスッキリした気持ちになっていた。



話をして居る間、高崎はずっと隣に居てくれて、

あたしのちょっとした期待はアッサリと砕かれた。




手を握ってくる、とか
頭を撫でてくれる、とか
ぎゅって抱きしめてくれる、とか


そうしてくれたっていいのに、と
心の中の悪いあたしは言う。



いっそ、そうやってくれたほうが、いいのかもしれない。



そうすれば、あたしは迷いもなく
優しくする高崎の元へ行くだろう。




だって、あたしは自分でも嫌になるくらい単純だから。




早く楽になってしまいたい。



この、ドロドロした気持ちを、早くどうにかしたい。


心の中にあるのはそんな気持ちだけ。




だけど、簡単に諦めてしまうと
これからずっと笑えなくなってしまいそうで、


それがどうしても嫌で…、




「白石の泣いてるとこばっか見ちゃうなぁ、俺」


高崎が笑う。



「ダメだな〜、あたし」



笑みを含んでそう言うと、
乾いた口に、冷たい麦茶を流し込んだ。



「アイツなんかやめて、俺にしたらいいのに」




「、は」



「って、思うけど。言わないよ、そんなこと」



言っちゃってるじゃん…。




優しい高崎の声に
不覚にもドキドキしてしまって、


その鼓動が耳に届くたびに、
自分を引き裂いてしまいたい気持ちに駆られる。




「本当は、今すぐにでも抱きしめたいし
泣きそうな顔だってできなくなるくらい優しくしたいけど、それをしてしまうと白石はもっと泣くだろ?」



自分の気持ちが見透かされてしまったみたいで、不思議な感覚だ。




「うん…」



そんなこと、気にしないでいいよ


って、言えたらどんなに楽なのかな。




「俺は、白石のしたいようにすればいいと思うよ」




それは、あたしにとって一番
頷きやすい言葉だった。




「たいしたこと言えなくてごめんなー」




そんなことない、


充分助けられたよ。



あたしはもう一度高崎に、お礼を言うと
話題を変えて、ゆったりとした時間を過ごした。





「____じゃ、俺かえるわ」



「うん、…ありがとう」



「おう。……また何かあったら聞くぞ」



「ん、」



あたしは微笑むと、玄関の扉を開けた。









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