ヒマワリ君の甘い嘘
***
「裕也、居る?」
目の前にあるのは、
人、机、窓、机、人、人
「え、あぁ……居る、けど…」
喋ったこともない女子に、頼んで
裕也を呼び出した。
甘い香水の匂いがする。
女の目に促された、裕也は
ガタンと椅子から立ち上がった。
驚いたような顔で、近づいてくる彼が
なんだか懐かしく思える。
あたし、
決めたの。
「華……、」
「ちょっといい?」
裕也の目を見てそう言うと、くるりと踵を返して、ある場所へと向かった。
学校が終わり、やっと家に帰れる生徒たちは、嬉しそうにあたしの横を通っていく。
あたしはそれを横目に、カバンを握り締めて歩いた。
しばらく歩いて着いたその場所は、
嫌という程、見慣れた場所。
足を止めて、振り向けば
裕也がいて、
あたしは目を逸らさずに、まっすぐ彼を見る。
「………、あのね_____
「ごめんっ!ほんと悪かった!」
彼は深く頭を下げる。
違う、
違うよ。
あたしはもう、
決めたもの。
「ごめんなさい」
あたしがそう言うと、裕也はゆっくりと頭を上げた。
「あたし、裕也の側でずっと泣いているよりも____ 」
あの時、ふと目の前に居る、笑った高崎が眩しく見えた。
自分を大事にしてくれていることが
嫌でも伝わってきた。
「あたしを笑わせてくれる人が良い」
ずっと近くにいて、
笑ってくれて、
笑わせてくれて。
気づくのが遅かったのかもしれない。
「人の気持ちを、ちゃんと考えられる人が良い」
今日の自分は
びっくひするほど、勇気があって、
これもアイツのお陰なのかな、なんて思っちゃうくらいに
あたしの中に響いたものがあったんだ。
だから_____
「ばいばい、裕也」
今どんな顔をしているのかな、あたし。
目の前に居る裕也の表情が
悲しそうに歪む。
やっぱり、泣きそうになってしまう自分は
完全に吹っ切れているとは言えないし
これからもきっと、こんな気持ちになることが何度もあると思う。