ヒマワリ君の甘い嘘












***








「み、南田くん………?」



私の声と共に、耳の奥でコングの鳴る音が聞こえた。




現在放課後。




日向くんには少し残る、とだけ言って

華に見守られる中、私は勇気を振り絞って南田くんに話しかけた。




南田くんは、部活に行くのか大きなスポーツバックの中身をゴソゴソと漁っている。




もしかしたら急いでいたのかもしれない。


南田くん、キャプテンだし…



声をかけてから後悔した。




「__ん?…えっ立花さん?」





二度見されてしまった……。



驚いた顔でそう言われた私は、いつもの癖で謝ってしまった。


南田くんの顔が一気に優しくなる。



「あはは、ごめんね。立花さんと話したことなかったからさ、
びっくりしちゃって」




あ、れ………



思ったよりすっごく優しくて、いい人だ…!


この滲み出ているいい人感。

包容力がある大人な雰囲気。

キャプテンを務めているだけある。




「…ちょっと良いかな」



そうそう、本題を言わなきゃ。


ちょうど数学に行き詰まってたところで良かった。



「あっ、部活?…急いでる?ならいいんだけど…」



「部活はもう少し後からだから急いでないよ。…どうしたの?」



良かった…!



「えっと、数学教えて欲しくて…」




「あぁ、良いよ。_ちょっと待ってね」



快くオーケーしてくれた南田くんは、机の上に乗っているものを片付け始めた。



良かった…!!



チラリと華を見ると、“グッジョブ”と
親指を立てた。


南田くんにばれないように華に笑いかけると、華もそれに応える。


そして、高崎くんが来た後
口パクで「ガンバレ」と私に伝えると、手をヒラヒラ振って帰っていった。



「おまたせ。…どこ教えれば良い?」



後ろから南田くんの声が聞こえて、ハッとして振り返る。



「えっ、あ……ここ!」



テンパる私を見た南田くんは、クスリと笑った。



「(はずかしい……、)」


私のノートとシャーペンを手にとって、サラサラと公式を書いて行く。


南田くんは私が解けない問題を、たったの数十秒で解いてしまった。



「ここにこれを代入すれば簡単に解けるよ」



「あ……ホントだ…」



「ありがとう!」と南田くんに頭を下げる。


少し大袈裟に言い過ぎたのか、南田くんは困った笑顔で「どういたしまして」と言った。



「立花さん、珍しいよね。こういうの」



「へ?」



南田くんはペンケースを片付けながら言う。



「いや、立花さん男子嫌いかと思ってたからさ」



男子嫌い………、



確かに、日向くんや高崎くん以外
まともに会話した人は少ないかも…。




「以外と良く喋るんだね」



ニコリと笑う南田くん。



“良く喋るんだね”って……それ
褒めてるのかな…………



もしかして喋り過ぎた!?



「じゃあ俺行くね」



「あっ、うん!ありがと!」





< 168 / 201 >

この作品をシェア

pagetop