ヒマワリ君の甘い嘘
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「お邪魔…します……」
小さな声でそう言った小夏の手を取り、俺はテレビの前へと誘導した。
小夏は、今にも転びそうな足取りで後をついてくる。
期末テスト前の休み。
日向くんの家で勉強したい!という小夏の嬉しい提案に従って、今日は二人で勉強。
二人で勉強するといっても、俺がほとんど小夏に教え込むハメになるだろうけど。
「えっと……その、コレ…!冷蔵庫に入れて置いて……下さい」
途切れ途切れの言葉と一緒に差し出されたケーキ。
「何で敬語なんだよ」
「いや、だって……」
「緊張してる?」
ふ、と笑って小夏に聞くと、彼女は目を伏せた。
心なしか、さっきから握っている小夏の手が、いつもより汗ばんでいる。
「そりゃ……してる、よ」
“まだ日向くんの家、一回しか来たことないし”そう言って、小夏は俯いた。
そういえば小夏と付き合ってから、一度も俺の家に来ていないな。
まだ一回しか呼んでなかったことに驚きながら、小夏から受け取ったケーキを冷蔵庫に入れる。
その一回も、俺が風邪で寝込んでいた時に、高崎や白石と三人で来た時だもんな。
ということは、二人きりでここに来るのは初めてになる。
そう考えると、俺も人のことを言っている場合じゃないんだけど……
つーか、彼氏の家来るのにスカートなんか履いてくるか?
完全に煽ってるとしか思えない。
この、無自覚が……!
「べ、勉強しよっか…」
「…ん、」
危うく俺の妄想が膨らんでしまう前に、小夏が口を開いた。
何事もなかったかのような顔で返事をした俺は、リビングのテーブルに小夏と向かい合わせになって座る。
そして、カバンからドッサリとテーブルの上に置かれた教科書やノートなどを、開き始めた。