ヒマワリ君の甘い嘘
「ここ…、どうやるの?」
開始早々もう頭にクエスチョンマークを浮かべた小夏が、問題集を指差す。
思ってた以上に早いな……
内心苦笑いしつつ、小夏の質問に答える俺。
「そこはこの公式当てはめると簡単にできる」
「あ、本当だー!」
嬉しそうに問題を説き進める小夏を、俺はジィっと見つめた。
小夏のいいところは、小さなことでも
こうやって笑うことだと思う。
今の俺と同じように、この笑顔にときめいてしまった人は多いはずだ。
たぶん。
だから尚更、俺にしか見せないこいつの顔を見たくなる。
向かい合った彼女の顔を覗き込むように見ていれば、それに気づいた彼女が顔を上げて微笑む。
しばらく目を離さないで見つめれば、恥ずかしくなったのか顔を赤くしてすぐ俯く。
あぁ、もう。
この人は可愛くてしょうがない。
いつも俺が小夏を抱きしめたり、キスをしたりするのはほとんど衝動的で、身体か勝手に動いているようなもの。
俺の中では、ほとんどの責任は小夏にあると思う。
こんなふうに、
俺を見て一瞬で、顔を赤くする。
「小夏」
「な、に」
「こっち来て」
目を逸らしたままの彼女に言う。
小夏は俺の方を向かず、必死に問題を解いているみたいだ。
顔が赤いから、魂胆はバレバレだけど。
「べ、勉強しないと…」
「ほら」
「・・・・」
「おいでって」
その言葉に顔はあげたものの、口を一文字に結んで、一向に動く気配がない。
俺は小さく息を吐くと、手に持ってたペンをテーブルに置いた。
「そっちが動かないなら、俺が動く」
驚いた声を上げた小夏を無視して、俺は彼女の隣に腰を下ろした。
小夏の首筋から、シャンプーの匂いが香る。
「(しまった…、割とヤバイかもしれない…)」
服装とシチュエーションが違うだけで、こんなにも気分が変わってしまうのか。
学校では気にならないことも、ふたりきりの密室では理性を掻き立てられるだけになっている。
「ちゃんと、真面目にしないと……」
さっきよりさらに赤くなった顔で小夏が言った。
その言葉にハッとさせられる俺。
危うくそのまま首に噛み付いてしまいそうになってた。
「勉強しないなんて言ってない」
“このまま教えれば済む話だし”と、俺は言いながら小夏の後ろから手を回す。