ヒマワリ君の甘い嘘
本当、どうしてあんなことしてしまったんだろう。
小夏の目をちゃんと見れない俺の視線は行き場を失って、俺の袖を握っている小夏の手に移った。
「………………俺のこと嫌いになった?」
声が震えた。
今にも泣きそうな声でそう言ってしまった。
力なく発されたその言葉は、煩い世界に吸い込まれていく。
かっこ悪い。
女々しくて、正直自分でも少し気持ち悪いと思う。
「___嫌いになんて、ならないよ」
「・・・・っ」
驚いた。
彼女が微笑みながら言うもんだから。
「もっと詳しく聞きたい、とは思うけど。そんなことで嫌いになったりなんかしないよ」
“私にはわかんない気持ちとか、たくさんあっただろうし”
彼女はそう続ける。
俺の頭の中の気持ちを、全て言葉にしてくれた小夏。
そうだ、
たくさんあったんだよ。
俺にしかわからないモノが。
だけど、今更全てを説明したって
俺が母さんを殴ったっていうのは変わらない。
「……お母さんと会うことってあるの?」
母さんと会う……、
もう数年間声も顔も見ていない。
俺の家に届くのは、資金と黒色のカラーコンタクトだけ。
「もう何年も会ってねえよ」
会ったって、あっちは混乱するだけだろ。
「会いに行こうよ……」
「は、?」
母さんに、会いに行く……?
「あっ、いや、私とじゃなくて!日向くんが、ね!」
「……ああ、……それはわかるけど……」
会って、
どうすればいいんだ……
だって 会ったらまた___
“どうしてそんな目の色なの……”
「会う意味なんてない」
「こよままじゃダメだと思うの、…だから___」
違う、
小夏の言うとおりだ。
このまま逃げちゃいけないと思う。
けど……
恐い____
「大丈夫だよ」
ぎゅっと、俺の手に温もりが広がった。
「日向くんなら大丈夫」
小夏はゆっくりと続ける。
「それに日向くんのお母さんでしょ?ならなおさら大丈夫だよ」
ふふ、と柔らかく微笑む彼女。