ヒマワリ君の甘い嘘




昨日と変わらない状況。




彼とあたしだけの空間が、またやってきた。




教室の中で、あたしは自分の席に座り
黙って窓の外を眺める。




「そっち、行ってもいい?」




昨日と違うのは、高崎がそう言ってきたこと。



あたしの前の席に座った高崎は、何か言いたそうな顔をしている。



あたしは目のやり場に困って、結局は自分の手を見つめてしまった。





「昨日、どうしたの?」




その声とその質問に、私の方が小さく震える。




「何かあった?」




おおありよ。



もう頭の中ぐちゃぐちゃで、よくわからない。





「華ちゃん、こっち見て」




え……



その言葉には答えることができない。




見れないよ。




何故だろう、理由は全くわからないのに。


どうしてこんなにも、モヤモヤしているんだ。




するりと、あたしの顔に高崎の手が触れた。



思わず顔を上げてしまい、今日初めて見る彼の顔。




いつもとは違って、見たことのないような顔をしている。




その顔を見ていると、なんでかわからないけど
目が熱くなった。



「どしたの?」



高崎は心配そうに聞いてくる。





「……わかんない」



自分でもわかんないんだよ。



「高崎に、こんなにも大事にされているのに……」



あぁ、ダメだ。



泣いてしまいそう。



あたしは涙をグッと堪える。




『華ちゃんから言ってみたら?』




小夏の言葉が、頭に浮かんだ。




言わなきゃわからない。



きっと、あたしも高崎も。





「大事にされてるのに……」



それが嬉しくてたまらないのに。




「女の子といるところ見てすごい嫉妬しちゃったり、なんでもっとあたしに触れてくれないんだろう、とか…

嫌な自分ばっかで、頭の中ぐちゃぐちゃで、もうよくわかんない……」




目に涙が滲む。




ぐすぐすと、鼻をすすり

彼を見た。



高崎は目を大きく開いて、硬直している。




「(え…………?)」




「いや…………ごめん。こんな時になんだけど…」




高崎は両手で顔を覆った。




「やばい、嬉しくてニヤける」




「…………は?」




「いや、ごめんっ、ほんとごめん。……だけど無理。嬉しすぎ」



いやいやいや、ちょっと待って



話が噛み合ってない。




「はーーーーーーーー……なんだよもー言えよーーーー」




高崎の手の隙間から漏れる声。




「……何言ってんの?」



状況が読み込めないあたしは、涙なんか引っ込んでしまっていた。


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