ヒマワリ君の甘い嘘
「…………うま」
温かいモノが喉を伝って、俺の体内に入ってくる。
誰かが作ったものを食べるのはいつぶりだろう。
ここ最近、嫌なこと続きでウンザリしていた俺にとって、その温かみはじんわりと心臓を熱くさせた。
頭をよぎる昼間の出来事。
キッチンで箱を落としそうになっている立花を助けたとき。
俺の身体に隠れてしまうくらい細くて華奢な身体。
予想はしてた。
俺と立花の距離がほとんど無くなるくらいに近づいたあの瞬間、俺の体は雨の匂いを思い出していた。
本人が言ってた。
中学の時あったことがあるって。
そんなことがまさかあるなんて思わなくて。
予想もしてなかったんだ。
あの雨の日の俺はただただ驚いて、その場から離れる事に精一杯だった。
_________違うんだ。
あの時の俺は、別人だ。
今の、汚れて、醜い、黒い俺。
こんな奴が
あいつのそばにいたらダメだよな…___
「…っクソ…」
乱暴にスプーンを置くと、カシャンと器が音を立てた。
俺にとって
唯一の光が
闇に変わった瞬間。