ヒマワリ君の甘い嘘
「静かに。高1なんだからいじめとかすんじゃねーぞ、俺がめんどくさいことになるんだから」
先生はそう言った後、静かに教室の扉を開けた。
さっきまでザワザワしていたのに、今は窓の外の風の音しか聞こえない。
そのくらい、教室が静かだ。
「聞き分けいいな、お前ら。静かでなにより」
ニヤリと笑った担任の後ろに見える、影。
扉をくぐって入って来たのは先生と頭がほぼ同じ高さにある男子。
華からも、男子って聞いていたけど……
なんというか、
多分、みんなの想像以上、というか
期待以上。
まるで漫画のシーンの一部を切り取ったみたいに、先生が黒板に名前を書いた。
深緑色の板に、白いチョークがよく映える。
“日向 葵生”
ひゅうが…あおい…?
「とりあえず仲良くしろよなー」
先生が言うと、日向くんはぺこりとお礼をした。
背が高くて、前髪が少しだけ長くて、
何もしていないのにおしゃれにみえる。
遠くからでも分かる、
「(かっこいい…)」
「よろしくお願いしゃーっす!!!」
クラスの男子が静寂をやぶると、教室は一斉に煩くなった。
かっこいい、イケメン、とか
聞こえてくる女子の小さな声。
日向くんをチラリともう一度見ると、
言われるだけある整った顔。