哀しみの瞳

秀の再生

秀は、あれ以来、仕事をする気力をまるで失っていた。

しかし、自分が手掛けた仕事もあり、秀は、何とかこなし、その後、退職願を所長に提出しようと、決めていた。



(総一郎)
「吉川君、何かあったのか?暫く休んでたみたいだが?」


(秀)
「はいっ!………両親から聞きましたが。お嬢さんとの話しの事ですが、私はそういう気持ちは、一切ありませんし、この事務所の件についても、まるで、そういう、器では、ありませんので。他を当たってください。」



(総一郎)
「ふーむ!それはっ、君の誠の本心なのか?」



(秀)
「はいっ、以前にも、ちよっとお話ししたかと思いますが、私には、心から愛してる女性がいます。……
(何とも悲しい顔になる)突然ではありますが、
(内ポケットから、退職願を出す)
ほんの一年の間でしたが、よい経験が出来たと思っています。今後は、自分で何が出来るのか、暫くは、考えてみたいと思いますので」




(総一郎)
「君は!君は、自分ひとりで、何が出来ると言うのだ?ええっ?」



(秀)
「……その答えをこれから見つけたいと思っています。どうも有難うございました…」
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