哀しみの瞳
(甚一)
「余程、話したくない訳があるんだな?しかし、なにがあったにしろ、自分の命を軽んじるのは、けしからんぞ!ところで。誰かに知らせたりは、しなくていいのかな?」



一瞬、武の顔が浮かんだが、打ち消すようにした。


首を横に振る。



(甚一)
「帰りたい家は?」



アパート?両親の居る家?今の秀には、帰りたいと思える家すら、無かった。


また、首を横に振る。目からは、涙が零れそうになる。


(甚一)
「わしは、今日夕方、もう一つ、会合に出席する用がある。明日には、家に帰るのだが…
君さえ、良ければ、わしと一緒に、行くか?」


(秀)
「………」



(甚一)
「だんまりか?もう、連れて行くしかないな?…
明日は、此処を出るぞ!いいな?」
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