哀しみの瞳

電車はどうやら、千葉方面に向かっているらしい。
各駅停車の為、時間がゆっくりと発って行き、のどかな景色を眺める事が出来た。終点よりも手前で、降りたような気がした。
電車を降りて直ぐに、甚一は、何処かへ電話していた。


（甚一 電話）
「ああっ、わしだ！……うんっ、今駅に着いた。今から帰るが、…ちょっと、拾い物をしたんだ！連れて帰るから………あーん？ああっ、人間で、しかも、若い男だ！！……とにかく、一緒に帰るから、準備しといてくれ！」




（秀）
「あのぅ、突然、見ず知らずの私が、伺っても良いんでしょうか？」



（甚一）
「今、連絡したから！いいんだ！」


１５分程歩いて行った所に、その家は、あった。



川野税理士事務所と、看板が掛かっていた。そのまた隣りには、負けない位の大きな板が貼られていた。


川野空手道場～


（ええっ、空手道場って、この人は、腕に覚えがあるってのは、空手が出来るんだ！通りで…）


（甚一）
「おいっ、帰ったぞ！！美佐子！ 美紀？」


「はぁーい！」

奥より、親子らしい女性が二人出てきた。



「お帰りなさい！ああっ、さっきの電話で言ってらした方？その方かしら？」 母親の方か？



（甚一）
「おぅ、そうだ！ああっ、名前は…何と…ええっ―」


（秀）
「吉川 秀（ひで）と言います。急にこんなことして…付いて来てしまい…どうもすみません！」



（美佐子）
「まぁまぁ、とにかく、中へどうぞ！美紀ちゃん案内してあげて？娘の美紀って言うんですのよ！よろしくね？」



（美紀）
「母さん！もうっ、自己紹介ぐらい、自分でするわ！何よ！！」


何か人の良さそうな親子に見えた。