哀しみの瞳
(秀)
「心から愛する人を、見失ってしまいました。自分の希望であり、すべてでした。」



(甚一)
「女性の事かぁ?将来を誓い合った仲だったのか?」



(秀)
「はいっ、二人の中では、決めていたつもりでした。それなのに…回りの大人の思惑のせいで、彼女は、私の幸せの為、姿を消してしまいました。」




(甚一)
「今、その人は、生きているか?」


(秀)
「はいっ、きっと生きてくれていると、信じたいです。
しかも、その人のお腹には、自分の子供がいます。」


甚一は、暫くは、考えていた。言葉を慎重に選んでいるのだろう。



(甚一)
「がっ、しかし、君が今ダメになってどうする?辛い気持ちは、君を見てると、充分分かる。
その二人には、絶対巡り逢えると、信じるんだな!そしてその時を想い、どれだけ、自分を人間的に高められるか!しっかりと、地に足をつけ、その二人に、恥ずかしくない自分を、もう一度造るんだ。その日の為に。



秀の心の中


必ず会える?


会える事を信じてみよう。

今は会えない辛さに耐えるしかない。理恵だって今頃きっと耐えているに違いない!

二人の無事を祈ろう!

この想いが、必ず理恵に届く事を信じて…

この知らない人達の中でもう一度、生きてみることにしよう!
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