哀しみの瞳
待合室は、誰も居なくなり、看護婦さんには、もう帰るように、言われたが、理恵は、先生が帰るまで待つと言って、聞かなかった。



(カチャ)
誰かがドアを開けて、出て来るのが分かった。



(小林)
けげんそうな顔をして
「君っ、まだ居たのか?」


(理恵)
「はいっ、どうしても、先生に、話しがあって!」



「僕は、さっき言った通り、考えを変えるつもりは無い!君の体の事を考えて、言ってるんだよ!分からない人だな?」



(理恵)
「私、体を丈夫にする為だったら、なんでもします!
先生、今からでも、なんでも、言う通りにしますから、どうか、この子を、産ませて下さい。何分の一の確率だったとしても、産みたいんです!お願いです」



(小林)
「君ね!君はまだ18才だ!これからなんだ。今は自分の体を大切にする事だ!お産するって事は、女性にとって、一大事なんだ。君が想像してる以上に、大変なんだよ!そう簡単に決めれる場合じゃないんだ。特に君の場合は…可哀相だが、諦めるのも必要かと……」



(理恵)
「いいえ!諦めるなんて、できません!この子は私のすべてです。いいえ、私の命そのものなんです!この子を死なせる事は、私が死ぬ事と同じなんです!どうか、先生、私を助けて下さい。お願いします」
理恵は、小林の前で、土下座をして頭を下げた。目からはなみだが、こぼれ落ちる。
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