哀しみの瞳

（小林）
「君っ！やめないか！そんなことをして、どうなるものでも無いんだよ！どうして分かりましたと言ってくれないんだ！僕は君を助けたいんだ。まずは、君を生かす事が先なんだよ！」


（理恵）
「重子おばあちゃんが、言ってました。小林先生は、本当に立派な、いい先生だから、大丈夫だって！お願いですから、私を生かす為にも、この子を産ませて下さい。どうしても…産みたいんです！」



小林は、約束はしなかったものの、何とか、返事を先送りにしてくれた。来週もう一度来るように言われた。



小林は、研究室に来ていた。



（何で、俺の言う事を素直に聞き入れてくれないのだ。あの子は……どうして…どれ程のリスクを背負って、お産しようとしているか、分かってないからだ。出産時だけでなく、子供をお腹の中で大きくなるまでの過程に於ても、あね子の体では、無理なのだ。どう言ったら、分かってくれるんだ。それにしても、以外と真面目な子なのかも、あの涙は……
あれに、答えてやる事が俺にできるのだろうか？


小林はあの時の理恵の土下座する姿と理恵の涙を、思い浮かべていた。