哀しみの瞳
その頃家では、重子が、秀一の熱が下がりつつあるのを見計り、お粥を作って食べさせていた。
いくらなんでももう戻るはずが、あまりに遅いので、急いで秀一を寝かせ、神社に向かった。重子は、嫌な予感がした。


っと…理恵は、神社の入口付近で、倒れていた。




〇〇総合病院
内科 診療室内

(内科医師)
「小林先生からも、いつも、言われていたでしょう!どうしてこんなに無茶な事するんですか!いくらお子さんの為とはいえ、自分の身体の事も少しは、考えないと!ダメじゃないですか!まったく。吉川さん!!!小林先生からも、言って貰いましょうか?それと、また少し検診しないといけないので、2、3日検査入院してもらいますよ!!」



(理恵)
「はい!どうもすみませんでした…秀一が何とか熱も下がってくれたみたいなので、私も安心しました。私の事なら大丈夫ですから……」



(重子)
「もうっ、本当ですよねぇ!しゅうちゃんの事になると、もうっ、後先ないからねぇ、この子は…」



理恵は、医師が勧める検査入院を断り、無理矢理、病院を出た。




それから先の秀一は、まったく病気らしい病気は、しない子であった。


本を読むのが大好きな子で、まごころ園の中に置いてある本を一冊づつ、自分で開いては読んでいた。どうやって読むのかと誰にも聞いてきた事はなかった。


理恵が、ピアノを弾き、唱っている時は、一時本を読むのを休めて聞き入っていた。その姿は、まるで、子供らしからぬ目で理恵をじぃーっと見つめては、職員の人達からは、からかわれていた。

ただそれには訳があり、どうやら、自分もピアノを弾いてみたいらしく、皆がピアノの部屋を出て行った後で誰にも知られない様に、一人で、見よう見まねで弾いてるところを、園長先生が、いつか見てしまったらしい…到底素質のかけらもないみたい!と、笑って話していた。
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