哀しみの瞳
(理恵)
「いいえ!私一人では、何にもできませんでした。園の方達や、おばあちゃんが私を助けて下さったお陰で、秀一をここまでして来れたんです。園長先生なんか、園の子供達以上に、気遣ってくださって」



(重子)
「違うよ!しゅうちゃんは、誰にでも、可愛がられる素質をきっと、生まれながらにして持っているんだよ!…………
でも、顔や姿は、理恵ちゃんには、まるっきり似てないんだけど、…
あの子は…父親に似てるのかい?」



(理恵)
「ええっ、園長先生にも、言われたんだけど、父親とまるで双子のようにそっくりなんです!ふっふっふっ」


奥から秀一が走って来た…



(秀一)
「重ばあちゃん!この本ねっ、とっても面白いね!この中に書いてある、お母さんはね………」



(重子)
「えええっ!しゅうちゃん!ここにって…あんた、平がなみんな読めるのかい?まだ誰からも教えて貰ってないはずだけどね…理恵ちゃんかい?」



(理恵)
「いいえっ!私も、そこまでは…教えてないです!今度ピアノを教えてみようかとは、思ってたんですけど。本はいつも一人で読んでるし。ただ見てるだけだと……」



(秀一)
「僕もうっ、読めるよ!園長先生達の話したり、書いたりしてるの、いつも見てて…独りでに覚えたんだよ!」


理恵も重子も驚いて思わず二人顔を見合わせて笑ってしまった。
< 131 / 296 >

この作品をシェア

pagetop