哀しみの瞳
次の朝早くに、理恵を迎えに来ると、理恵がばたばたと、支度をしているところだった。おばさんの理恵を叱る声だけが、響いていた。 (待子)早く!もう、何処えでも、行ってちょうだい!お父さんと貴女の間に入って、母さん、どうしたらいいか、もう!嫌になっちやうわ! (秀)理恵!行くよ!(理恵)ひでぇっ、すぐに行くから~ 家を出てからの理恵は、複雑な顔をしていた。実際のところ、おじさん達に言われてる事と、僕の言っている事の狭間で、悩んでいるのだろう。 僕はあらかじめ二人きりになれる所を探しておいた。その資料館は、日曜日ともなると、意外と誰も足を運ばない所で、中は広くて、とても落ち着いて話ができる。「理恵?」ようやく僕から、話掛けた。理恵は、ずっと、俯いたままだった。「理恵は、僕が理恵の世話をやくのが、もう、嫌になってる?もう、子供じゃぁないし」「そんな事、嫌じゃないよ、絶対に! それより、ひでの方が、理恵のこと、邪魔になってくるよ、これから先、きっとひでが大学生になったら、理恵なんか、うざくなってくるよ!間違ない…」…もう泣いている… 「理恵は、僕の事、信じれないのか?」 理恵は黙って、首をふる。 「理恵には、夢があるだろう?それに向かって、誰が何て言おうと、頑張るんだ!その為には、もう少し、強くなれるよね? 理恵?」 「それに、理恵は、一人じゃない、武もいるし、沙矢ちゃんも、いてくれる、そのお陰で、僕も、少しは、安心してるんだ。僕は必ず、弁護士になってみせる!週末には絶対、理恵の所に帰ってくるから!理恵は夢に向かって、頑張るって、約束して!」 「うん。分かった。指切りげんまん、嘘ついたら針千本のーます。指きった!」ようやく 理恵が笑った。