哀しみの瞳

（由理）
「由理は、お母さんのこと、全然覚えていないから、正直分からないの！この家にいると、おばさんや美紀さんが何時いてくれて、お母さんみたいに思ってるから……本当のお母さんのことを書けって言われても…困ってるの！」


（秀）
「秀一は、どう言ってやったんだ？」



（秀一）
「……今の由理の気持ちを正直に書けばいいんじゃないかって、そう言ってやりました。でもその後で、お母さんのことを色々訊かれちゃって…」



（甚一）
「ほうっ、秀一、お前でも返答に困る時があるのか？なんだ！それで母さんの事思い出してたか？」



（美佐子）
「あなたぁ！何でそんな風に言うの？秀ちゃんだってお母さんのこと思う時ぐらいあるわよね？」



（秀）
「由理？由理は、いつもいつでも、美佐子さんや、美紀さんが由理のこと思ってくれてて由理の世話をやいてくれて、父さんからしたら、もうっ、お母さん以上にしてもらっていると思ってる。由理は、やっぱり秀一が言うように、正直に思ってる通りに、作文書けばいいと思う。そう思いますよね？美佐子さん！美紀さん！」


二人共、うんうんと頷く。


（秀一）
「由理！またあとで、俺が作文見てやるから、早くご飯食べて部屋へ行こう！」



全員顔を見合わせて、ニッコリと笑う。