哀しみの瞳
電車の乗換えは、詳しく、秀が書いてくれた。



時間が掛かったが、何とか大学に辿り着けた。



さて、これから先は、どうしよう！あまりにも、広すぎる。何もかもが凄かった。職員らしき人に学部を言って教えてもらった場所で、出て来るのを、ひたすら待っていた。学生達が様々な表情をして通り過ぎる。



と、遠くに、手をポケットに突っ込んで、俯き加減で歩いて来る秀一が見えた。
（しゅう！見つけた！）



しかし、その隣りに楽しそうに話し掛ける女の子がぴったり寄り添っていた。



由理の目が釘付けになる。



秀一は、それ程も楽しそうにも見えなかった。



由理は、胸の動悸が激しくなるのを自分でも、感じていた。



茫然と立って居る由理に、ようやく秀一が気付いた。


由理の目には知らずに涙が溢れていた。



（秀一）
「由理？………何でお前が、此処に？」




（由理）
「……………」



言葉が見つからない、涙が後から後からこぼれ落ちる。心の中の動揺が、何なのか……



突然、由理は、後ろに向いて走り出していた。思いっきり、走っていた。


（しゅう何て…嫌いっ！！！）



後ろから、由理を呼び止める秀一の声は聞こえていた。



何処をどう走ったのか…自分でも分からなくなっていた。



自分は、どうしてあんなに動揺したのだろうか！あんなに会いたかった秀一の姿を見れたというのに。



隣りに居た女の子の笑顔が、今でも由理の脳裏に焼き付いている。
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