哀しみの瞳
どんな顔をして、家に帰れば良いのか、由理にはまるで分からなかった。



どうやって学校から、家まで辿り着いたのか……




(由理)
「美佐子さん…ただいま戻りました。」



(美佐子)
「はぁーい、由理ちゃん、早かったのねぇ!お帰りなさい!」




その由理の顔色の悪さを、美佐子は見逃さなかった。14年間、ずっと由理を見て来たのである。由理が、哀しい時、辛い時、苦しんでる時も、顔色一つで分かってしまう、美佐子であった。



今日の由理は、尋常ではない。



暫くして、着替えを済ませて出て行こうとする…



後ろむきのまま…



(由理)
「ちよっと…出掛けて来ます…帰りは………父さんに後で電話しますから…」それだけ言うのが、精一杯の由理だった。



(美佐子)
「由理ちゃん…何処へ……」由理には聞こえていなかった。



美佐子は、思った。やっぱり自分の嫌な予感が的中したのではないかと思った。



慌てて秀に連絡するが、こんな時に限って!なんでつながらないなんて……



(そうだわ…絶対に秀ちゃんの所だわ!行くとすれば。あの子が、まっすぐに会いたいと思うのは、秀一に決まってる。)
< 211 / 296 >

この作品をシェア

pagetop